前回の記事に引き続き、フィリピンで3番目に高い山Mt.Pulagの紹介をします。今回は登山の全容について、早朝1:30から出発し、10:30頃に宿に戻ってきた全行程を、初めて夜間登山を経験した身から正直に感想を述べたいと思います。(本情報は2023年12月時点のものになります)
1:30 am 出発
5時間ほどの仮眠を挟んだのち、この時間からの出発となりました。じっくりは寝れず、1時間おきくらいに目が覚めたりしましたが、体調については万全で不安な点は全くありません。空には満点の星空が広がっており、この時はオリオン座をくっきり見ることが出来ました。
気温について、深夜なので前日よりも寒くなることを予想していましたが、風が穏やかだったため、そこまで寒くは感じませんでした。この時の服装は、Tシャツ・長そでシャツ・薄手のパーカー・ナイロンのパーカー・ナイロンの薄手ジャケットの5枚重ね、下はジャージにジーンズの2枚履きでした。
辺りに明かりになるようなものはなく、手元のライトが道を照らす唯一の手段になります。最初は畑のあぜ道のような拓けた場所で、まだ登っているという感じではなく、勾配の少ない平坦な道を進んでいきます。
雨が降ったような形跡はありませんでしたが、地面には水たまりと泥溜まりがたくさんできているので、真っ暗な中ですが足元に気を付ける必要があります。途中、だんだんと道幅が1mに満たないくらいに狭くなり、植物に囲まれた山道になってきました。
2:45 am 第1休憩地点
歩き始めて約1時間15分、最初の休憩ポイントに到着しました。ここには本当に簡易的なトイレもあります。全然疲れてはいないものの、思った以上に暑かったため、休憩しつつ服装をいくつか改めました。この時点では上の服が3枚、下がジャージ1枚でちょうどよかったです。
第一休憩地点に着く15分前、つまり歩き始めてから45分ほどで岩場で出来た自然の階段を登っていくような地形になりましたが、まだまだ傾斜は厳しくなくハイキングのような道のりになります。
4:00 am 第2休憩地点
第1休憩地点から出発してさらに1時間15分後、2回目の休憩ポイントに到着しました。ここにも簡易的な穴だけのトイレがあります。依然として、空は変わらず真っ暗なままで、ライトを照らさなければ何も見えません。ここが最後の中継地点となり、後は幅の狭い道が山頂までずっと続いています。
第1チェックポイントを過ぎてからはまた平面な道になり、時には下っていくようなポイントもありました。登りと下りが交互に来るような感じで足の負担的は登り続けるよりも軽減されます。体力的にはまだまだ余裕です。
下の写真は、帰り道に明るくなってから撮った写真ですが、道はこんな感じで周りの植生が低くなってきます。背の高い樹木が無いので風が強く吹き付け、一気に体温を持っていかれます。ここで、持ってきた服を再び着込み始めました。
幸いにも発汗はしていなかったため、体が冷えることは避けられました。登り始めと後半戦でかなり体感気温が異なってくるので、体温調節が非常に難しいです。
4:30 am 2つの難所
先ほどの写真のような背の低い草木が広がっている場所が続くので、冷たい風が体温と体力を奪っていきます。ただ、ここまでは許容範囲で、正直登山というよりもハイキングに近く、何の苦労もありませんでした。しかし、ここからが正念場です。
ここまでは岩で出来た比較的しっかりした足場だったのですが、山頂付近に近づくと、泥と水たまりだらけの道を進む必要があります。不安定な足場に加え、ライトで照らした部分しか視界が確保できないので、進むのには困難を極めます。
結論から言うと、何回か転んでしまいました。前向きに転んだのが2回、尻もちをついたのが1回、ぬかるみに足を取られて靴が脱げたのが2回、バランスを失いかけたのが10回以上というとんでもないコンディションの道でした。服も靴もドロドロで、精神的にもかなり辛かったです。。。
既に歩き始めて3時間30分ほど経過していますが、比較的平坦な道が多かったおかげで体力的には余裕がありました。しかし、山頂付近では、腿上げトレーニングをしているかと錯覚するくらい、足を上げて一歩一歩進まないと行けない場所がいくつか出現します。
2つの難所のために、ここに来て急激な疲労感に襲われることになります。しかも前述の通り、登山道のコンディションは良くないままです。しかも、他の登山客で前が詰まっていたりするので、なかなか思うように前に進むことが出来ません。
山頂までもう少しということは分かっているのですが、これらの難所のせいで心が折れそうになりました。
6:00 am 山頂に到着!
予定時刻よりも30分遅れましたが、必死に歩くこと4時間30分、でなんとか山頂にたどり着くことが出来ました!いろいろな困難があったものの、気力を振り絞り、意地だけで登り切りました。そして、山頂からの景色がコチラ。
今回は残念ながら雲が深く、朝日を見ることは叶いませんでした。しかし、やり切ったという達成感はひとしおです。こればっかりは実際に経験しないとなんとも形容し難い部分があります。やはりこの気持ちを感じるためには困難を乗り越えてこそなのかもしれません。
山頂にはたくさんの人で溢れ、みんな互いに健闘を称え、写真を撮り合っています。ただ、この山頂が風がビュービュー吹き荒れるので、凍えるように寒いです。山頂に到着した人の10%ほどが喜ぶ間もなく、うずくまって緊急体温保持用のアルミシートを羽織って震えていました。
私もそれほど重装備をしているわけでは無かったので、長くは居られませんでした。あと2時間もすれば雲が晴れるはず、とのことでしたが、登山熟練者のアドバイスに従い、40分ほど滞在した後に下山を決行することとなりました。その後は来た道と同じルートを戻っていきます。
帰りは明るくなっているため、登りよりも難易度は低くなっていますが、不安定な足場は顕在です。わずかに残ったエネルギーを振り絞り進んでいきます。結局下山を始めたのが6:40頃で、宿に戻ってきたのが10:40頃、全行程およそ15km、所要時間9時間の旅が幕を下ろしました。
初心者にMt.Pulagをオススメしない理由
ここまで感動的な景色と共に登山の全行程をお伝えしましたが、経験した身だからこそ初心者にはMt.Pulagをオススメしません。理由が3つあります。
山での気温は急激に変化します。Mt.Pulag登山には、バギオで暮らす分には不要なダウンジャケットやウインドブレーカーが必要です。また防寒着はもちろん、暑くなった時に脱いで取っておくための荷物の空きも考慮しなければなりません。着替えを際も暗闇の中で行う必要があり、大変です。
上記の防寒着に加え、ヘッドライトやレインコートなど、おおよそ日常生活では使用しないような専用の備品も必要です。持ち物を準備すること自体は簡単なのですが、もちろんお金が掛かってきますので、ツアー料金よりも余分にコストがかかることになります。
夜間登山で何が必要なのか、ネット上にも情報はたくさんありますが、実際何を持っていくかは判断が難しいです。私は水分補給を重視して、水ボトルを2L分持って登山しましたが、結果的に1Lしか使用しませんでした。残りの1Lは単なる荷物にしかなっていないので、余計に疲れる要因となってしまいました。
終盤のぬかるみは思った以上にひどく、服と靴をひどく汚してしまいました。また、途中でヘッドライトの充電が切れ、途中からスマホのライト機能で道を照らしていましたが、転んだ際に充電ポートに泥が入ってしまい、危うく壊れる一歩手前のところまで来ていました。
私の準備不足もありますが、非常に大変でした。。。
まとめ
今回はMt.Pulag夜間登山の全容と初心者にはオススメしない理由をお伝えしました。こちら、あくまでも初心者一個人の感想になりますので、ところどころかいつまんで参考にしていただければ幸いです。
私自身は非常に大変な思いをしたと感じましたが、熟練の登山メンバーに難易度をどうだったか聞いたところ、10段階中4くらいのレベルとのことでした。道のコンディションが悪かったのは間違いありませんが、傾斜は比較的緩やかで、ロープや梯子を使って上るシーンも無かったのでさほど難しくないとのことでした。
ちなみに登り切って帰ってきた後、オリエンテーションを行った施設に行くと、このような素敵な踏破証明書を貰うことが出来ます。料金は無料で、わりとしっかりした紙で作成してくれています。これも嬉しいサービスですね。案外忘れがちなので、しっかりと覚えておきましょう。
ここまで読んできて、面白そうと思った方は間違いなく楽しむことが出来ると思いますので是非行って見てください。また、初心者の方も、十分に準備を行ったうえで挑戦してほしいと思います。皆さんの冒険が素敵でかけがえのないものになるように祈っています。